サメ漁業とフカヒレの流通
西のフカヒレ集荷場 ―神戸―
東京、横浜がフカヒレ集荷の東の本拠地なら、さしずめ、神戸は西の本拠地といえる。
しかし、今では、神戸のフカヒレ問屋は、だんだんさびれてきているようだ。横浜も神戸も、フカヒレの集荷場であると同時に消費地である。フカヒレの需要は、やはり中華街で多く、中華料理店や在留中国人によって消費されている。
また、横浜も神戸もフカヒレ貿易の玄関口である。そもそも、フカヒレは対中国輸出品であったが、最近では、香港などから、安価な船ビレが多量に、いわば逆輸入の形で流れ込んでいる。
フカヒレ貿易には、トーメンなどの総合商社が介在し、香港、東南アジアの中国商人や国内の集荷問屋(その多くは中国商人)と取り引きしていると思われるが、その実態をつかむことは難しい。
さて、フカヒレ問屋であるが、そこではフカヒレだけを取り扱っているのではない。ほとんどの店が、色々な中華料理材料を扱い、なかには中国工芸品をはじめ中国物産全般を扱っている大きな店もある。
どの店も、次のような四種類のフカヒレ商品を在庫していた。①、尾ビレの素干品、②剥皮加工したヒレの1キロパック、③、翅(いと―筋糸)に加工した200グラムパック、④、フカヒレスープの缶詰。その価格は、缶詰以外は、いずれも1キロ当り15,000円前後である。缶詰は、翅の内容量や質によって、580円と1,100円と値が違っていた。
フカヒレスープの缶詰の一つは東京の株式会社「中華・高橋」で製造されたものであった。「中華・高橋」は中華料理材料の製造元であり、ここの製品が神戸にでまわっているのである。
消費地の調査はまだ不充分で、もっと詳細なデータが必要だが、一応ここで結論めいたことを書いてみる。
フカヒレがサメ産業の中心であることには間違いないが、この場合消費市場は、中華街を中心に、中華料理店や在留中国人に絞られてくる。狭く閉鎖的な市場であり、需要も限られてくる。また、フカヒレの需要が高まったとしても、サメの価格高騰にすぐつながるとは思えない。サメ全体の内、ヒレの重量はわずか4~9%にすぎない。
そこで、サメが漁業の対象として見直されるためには、サメの肉の利用度を高め、その魚価をあげる必要がある。 しかし、サメ漁に従事している船が少ないからこそ、サメの魚価維持もできているのであって、そのためにサメ専漁船も採算が合っているのが現状である。さらに付け加えるならば、サメは繁殖能力が極めて低い。現在すでに、サメの最大維持生産ぎりぎりのところに至っていると思われる。
筆者紹介
樽本 龍三郎(たるもと りゆうざぶろう)
近畿大学水産学部在学中からサメに興味を持ち、モウカ漁とフカフレの流通について、全国各地を調査に歩いた。また、気仙沼港のモウカ専業船「十八福洋丸」に乗船し、操業実態を体験する。この体験をもとにした同乗記が朝日ジャーナル「私にとっての旅」に入選。卒業後は家業を手伝っている。24才。
- 2022.11.21 「さめディア」に掲載*
- 2011.08.15 Word 版として改訂
- 2011.07.01 ブログ「魚の絵とイラスト」に掲載
- 1976.08.05「水産世界昭和51年8月号」に掲載
* 今回「さめディア」に掲載するにあたり、故樽本龍三郎先生の奥様をはじめ、たくさんの方にご協力いただきました。ここに感謝の意を表します。
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