ルポ 2022/11/21   2022/12/29    樽本 龍三郎

サメ漁業とフカヒレの流通

滅びゆくサメ漁 ―八戸―

八戸沖合からモウカの群が姿を消して久しい。以前は、このあたり一帯にモウカが群泳し、延縄を仕掛てもモウカばかりがかかってしまったという。八戸市鮫町では、鰹鮪組合のことを「モウカ組合」と呼び、その頃の面影を残している。
昭和18~25年のころは、鮫町の市場は毎朝モウカでにぎわい、その数は1,000尾から2,000尾であったという。その頃はモウカ漁船も数隻あったらしく、鮫町に3軒のフカヒレ業者がいたという。
ところが、今日、鮫町でモウカを獲っているのは、鮫町にある水産修練所の実習船、賓陽丸(48トン)くらいのものだ。フカヒレ業者もほとんど姿を消し、月館吉五郎商店がスルメイカの冷凍加工の片手間に、わずかばかりのフカヒレを扱っているにすぎない。しかし、このようにサメの水揚がなくなり、フカヒレ業者が姿を消していった傾向は全国的にみられる。その原因は、沿海の汚染でサメが岸へ寄らなくなったことや、サメの量そのものが少なくなったことがひとつ、それに加え、サメの魚価が安く、沿岸漁業として採算が合わなくなってしまったことが原因だろう。
それでは、以上のような状況下で、月館五郎商店が、いかにフカヒレ業を維持しているのか尋ねてみた。
月館氏は夏場水揚げされる若干量のモウカの生ビレを冷蔵庫に蓄積、保存しておき、11月にそのヒレを冷蔵庫から出して干している。夏場に干さない理由は、次の3点があげられる。
①夏はヒレに虫がつきやすいこと。②フカヒレの数量が少ないこと。③夏場は天候がくずれやすいのに対し、11月は一年の内、最も晴天の日が多いためである。さらに、夏場にヒレを入荷し、11月に干して出荷することで、付随的に次の利点があげられる。④夏は生ビレを安く入荷できるうえに、⑤冬になるとフカヒレの値が上る。
これとは別に、月館吉五郎商店では、船から直接ビレを購入している。その場合、船ビレは生ビレの浜値の26パーセント増しで取引きされている。船ビレというのは、遠洋・近海延縄漁船などで、混獲されたサメのヒレだけを取り、身の方は捨てて、そのヒレを甲板で乾燥させたものである。だから船ビレは荷上げする時点で立派にフカヒレとしての商品価値をもっている。ただし、洋上で、ヒレに針金を通し、ぶら下げて干しているため、どうしてもヒレ中央にきれつが生じたり、ヒレの縁がボロボロになっていて、フカヒレとしては品質が悪い。そして、船員は船ビレを売って副収入にしている。
以上の理由で、船ビレが生ビレの26パーセント増しという妥当な価格が出てきたのであろう。
月館吉五郎商店は、冷蔵庫に蓄えておいたフカヒレと、船が入るたびに買って蓄積していた船ビレを、11月に、横浜へ出荷している。

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