ルポ 2022/07/25   2022/12/29    井部 真理

さめのたれレポ(和歌山)

三重県の伊勢市や鳥羽市、和歌山県では、『さめのたれ(さめんたれ)』や『フカのかつら干し』と呼ばれるサメ肉の干物が古くから食べられている。
奈良時代には塩漬けの干物(佐米楚割、サメのスハヤリ)が天皇に献上されていた記録が残っている。
このサメ肉の干物は古来から伊勢神宮の大きな祭典には欠かすことのできない神饌(しんせん)の一品で大切な供え物とされている。伊勢神宮の参拝土産としても人気の干物だ。
薄く長く切ったサメをひらひらと垂らして干したことから、干しているときの垂れ下がった姿を語源としてサメのタレと呼ばれるようになったという。

和歌山県の那智勝浦町にある(株)森由商店さん*1を訪ねて、森本社長と奥様にさめのたれについて教えていただいた。大正4年からフカのかつら干しを3代にわたって作り続けている会社さんだ。
那智勝浦漁港に水揚げされたサメのほとんどを買い取り、加工されている。
1.5メートル以上ある大きなアオザメを30センチメートルほどのブロックに分け、皮や血合いを取って水にさらした後、大根をかつら剥きにするように薄切りにする。それを古来からの塩味や大正時代からのみりん味に味付けされて干し場で天日干しにする。

塩味のほうが分厚く、みりん干しはその半分の薄さで、パック詰めされている。
サッと炙って食べると香ばしくて、弾力のある食感。お酒のおつまみはもちろん、白いご飯のおかずにも箸の止まらなくなる絶妙な塩加減!天日干しされて旨味がぎゅっと濃縮されたお味だ。

これまでにもサメのタレは伊勢の干物屋さんで何度か購入して食べたことがあったが、干物のイメージからグリルで焼いて食べたことしかなかったが、天ぷらや酢の物やバター焼きなどの調理法も教わってきたので、帰ってきてさっそく試してみた。焼いておむすびの具や混ぜご飯にしてもおいしかった!まだまだいろんな食べ方を試してみたいと思った。

骨がなく身の柔らかい干物なので、子供たちにも食べやすく、伊勢地方では給食のメニューにも登場しているそう。

1500年以上朝夕のお食事の中で神様も召し上がっているサメと思うと、サメのタレを前にするととても厳かな気持ちになる。
サメは古事記などの神話にも登場し、神々が支配していた神代から日本人にとって身近な存在であるが、このサメのタレは改めてサメと日本人の歴史を感じさせてくれる郷土料理のひとつである。


〔関連リンク〕

*1 さめのたれなら森由商店

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